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スウェーデン木工留学記
カペラゴーデン編
2003/04/13
第29回 イースターの旅行 中編 修道院と伯爵の邸宅
オランダのチューリップ公園へ行った後、もう少し南東へ進みベルギーの古都、ブルージュを訪れました。ここには第5回でも少し紹介していますがカトリックのシスターである祖母の妹が修道院に住んでいます。古い街並みなので少し迷いましたが、町中にある修道院に到着しました。
2002年のブルージュはヨーロッパの文化都市として選ばれていて2月から8月末まで毎日のようにイベントがあり、街の整備が進んでいました。とは言っても、道を石畳化するなどの車には向かない整備です。
翌朝は修道院内で毎朝、ミサに来られる老夫婦と一緒に朝食を食べました。シスター達は専用の食堂で食事をするので一般人は立ち入ることができません。いずれこの修道院の紹介もしたいと思います。
朝食で一緒に食事をした老夫婦は、2年半前にカペラゴーデンのサマーコース受講後の旅行で会っていたので久しぶりの再開です。前回、自宅訪問をしたことを覚えてる?と尋ねたら、「また来るか?」と言われ時間の都合上、当日すぐに行くことになりました。
車に乗せていただき15分くらいの郊外へ。一回、訪れているとはいえ、やはり豪邸。草木はまだ春を待つ状態でしたが、すごい庭。でも、散歩をするには最高に気持ちよいです。今回も庭の地図を見てから道を確認してから散歩に出発しました。
邸宅には20人分のベッドがあるそうなのですが、現在はたった2人で住んでいるそうです。彼ら曰く、「若い子達は床にでも寝られるから40人は楽に入れるよ」とのこと。ラジコンのかなり大きいヨットが2隻あり、飾ってあるのかと思ったら、池で競争をさせるのだそうです。かなり面白いらしく興奮しながら話していました。「ミスすると沈没しちゃうんだっ。」50メートルくらいの長さはありそうな池なので確かに楽しそうです。
この土地はかなり由緒のある土地のようで、過去の文献や写真記録、さらには写真集になっている本まで見せてもらいました。その中でも興味深かったのが約10年前の火事の話でした。
その火事で4階建ての上3階分が全焼してしまったのです。朝食を食べていたら近所の人が来て、家が燃えているぞっと教えてもらい避難したそうです。その時の家が燃えている写真や、消火後の家の惨状を見ながら彼の話は続きました。消火作業中に消防士が亡くなったり、たくさんの思い出が無くなってしまう中でも、素晴らしいこともありました。
当時、息子さんの1人はアメリカへ建築の勉強へ行っていたそうで、クラスメート達を連れて来て、3年をかけて現在の家を再建したのです。再建記録の写真には家の中に寝泊まりをしながら壁を修復したり、庭で休憩している若い学生達の姿がありました。建築を勉強している者にとっても素晴らしい時間だったことでしょう。「娘を学生の1人に取られたよ(笑)」とは言っていましたが、父である彼にもうれしいことだったそうです。
ブルージュのシンボルである鐘楼ベルフォート
伯爵の家の玄関です
庭を散歩しました。遠くに家が見えています
池の対岸から見る邸宅
現在の家は2階建てになっています。学生達が作ったモダンな内装の部屋には夏の間に住み、伝統的な家具のある古いスタイルの部屋は暖かい雰囲気があるので冬期の生活の中心になるそうです。No.04でも紹介していますが彼はベルギーの伯爵です。とても感じの良い方です。
ブルージュの街の見物をしました。ヨーロッパ文化都市の影響で人がとても多く混雑していました。有名なベルギーワッフルには2種類あるのですが、手軽で美味しいので毎日食べました。
4泊した内の最終日は修道院内の見学をしました。シスター達の生活する建物には立ち入ることは出来ません(神父でさえダメ)が庭などを見ました。庭などはシスターの家族など限られた人だけが入ることが出来る場所で、修道院の外観からは想像もつかない綺麗な庭が広がっています。
シスター達にも高齢化が進んでいて昔のように、自分たちでいろいろな事をすることは難しいようなのですが、庭や、教会など神様との接点になる祈りの場を美しく保つことにとても力を入れています。実際、修道院内は必要最低限の物だけで質素ではありますが、とても落ち着く場所になっています。
この見学時に修道院で使用しているシタラ(琴のような弦楽器)の台を作ってほしいと依頼されました。高さ、角度を変化することが出きて、安定する3本足、さらに軽いことと、なかなか難しい条件でした。完成品はサイトにも載っています。
翌朝、朝食を食べてから再びスウェーデンへ向けて出発しました。ベルギー滞在中、僕は花粉症に悩まされましたが、他の国では問題なく安心しました。往路とは違い、寄り道をせずにまっすぐ走っていきました。アウトバーン(高速道路)を時速130キロで軽快に走り続け、18時頃になりハンブルグを越えた辺で休もうとサービスエリアに入ったその時!
ここまでの走行距離2285キロ。
修道院の外観。表札も何もないので修道院だとは分かりません
内部に入ってすぐの廊下。絵はがきにもなっている美しい静けさです
修道院内の小さな教会。石の聖堂です
修道院内の客との談話室。さりげなくウェグナーの椅子があります
修道院の庭。ちょうど桜の開花の時期でした。奥には野菜などを栽培する畑もあります
庭と外界を仕切っている高い煉瓦の壁。歴史を感じます
木工留学記
ストックホルム編
カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。
本になりました!
スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0
当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!