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スウェーデン木工留学記

カペラゴーデン編

2003/05/11

第33回 カペラゴーデンの日本旅行

カペラゴーデン家具・インテリアデザイン科では2001-02年度の終わりである5月6日から19日に日本へ旅行をしました。これは様々な学校や工芸家、カペラゴーデンに縁のある方を訪ねる研修旅行でした。僕はこの旅行に関するデジタル写真資料を誤って全て消去してしまったのですが、他の学生からアルバムを借りてきました。僕の記憶と彼女のアルバム上の記述を元に今回のメルマガを送ります。

6日のコペンハーゲンからスカンジナビア航空で東京へ向かい、翌7日、東京に着いてすぐ電車で羽田空港へ移動し、旭川へ行きました。東海大学旭川キャンパスがこの日の目的地でした。カペラゴーデンの卒業生には東海大学出身の者がいます。また大学で教鞭をふるっていたスウェーデン人もカペラゴーデンとの付き合いがあります。校内見学後、職員と学生の皆さんが主催の立食パーティがあり、カペラゴーデンの学生にとっては最初の日本食との出会いでした。この日は旭川ユースホステルに宿泊。

 8日は旭川周辺で活動している数人の木工家を訪ねました。非常に緻密な仕事をする方、古い家屋を工房として改装しながら使っている所、とても興味深い構造を多用している作品などを拝見しました。カペラゴーデンで数点を資料として購入もしました。

 その後、旭川と札幌の間にある当別へ向かいました。ここにはスウェーデンヒルズという一帯があり、ガラス工房と木工房があるスウェーデン交流センターが建っています。バスでスウェーデンヒルズへ向かうと、いきなりスウェーデンの家そのものといえる分譲地が現れ、学生達は驚いていました。

ここの木工房ではカペラゴーデンの卒業生が働いています。その晩は彼の個展が開催されている札幌へ移動し、見学後、良い感じの和風居酒屋へ出向きました。様々な日本の総菜に、「どの様に食べるの?」「これは何?」と質問が連発しました。皆、意外と何でも食べられたのですがコンニャクの感触はどうしてもダメの様です。一年経った現在でも時々、この話題が出てきます。「コンニャクー」という感じに。

 この晩は札幌中心街にあるカプセルホテルに宿泊。カプセルホテルに泊まってみたいというリクエストがあり、様々なお風呂があるスパ(いわゆる健康ランド)を見つけておきました。

 9日。早朝の便で今度は関西空港へ移動し、京都へ行き、中村外二工務店の関連会社、興石という家具を扱う店を訪れました。工務店は純日本家屋が専門なのですが、興石は北欧の家具を中心に扱う会社です。興石のコレクションの中にはデンマークの巨匠ウェグナーが初めて製作した椅子など非常に貴重な作品がいくつか含まれていて、デンマーク本国で開催された家具展でも展示されました。

 工務店内の見学もしました。小物を作る部門があり、ここは僕にとっては大変に興味深い場所でした。和紙を使ったランプ達は、繊細でありながらもとても美しかったです。京都では東寺近くにある東寺庵という外国人の宿泊が多い安宿に泊まりました。ここで皆はゴキブリと対面。

 10日は京都近辺を自由行動。寺を見に行ったり、大きな籠を買った者もいるようですが僕は長年の夢でもあった姫路城を訪れました。天気はあまり良くなかったのですが見学者は数えるほどしかいなかったので、ゆっくりと見る事が出来ました。噂で聞いたほどは城内に現代の物が目立っていなかったので安心しました。消火栓も木で覆われているデザインになっていました。極力、当時の状態および雰囲気を留めるように工夫していると僕は感じました。

11日。金沢へ電車で移動し、ストックホルムのカール・マルムステン校で学んだ方がいる金沢美術工芸大学を訪れました。校内見学の前には大河ドラマを機に再現された金沢城見学をしました。当時の技術を使用して建てられたとの事で、組み手など皆は色々な所に興味津々でした。しかし、僕にとっては、前日の姫路城と比べるとかなり酷いという印象を持ちました。観光客の為とはいえ、音楽や案内放送、さらに空調等の配管が丸出しな事や、必要以上のライトアップなど、当時を再現する製作法だとは言っても、当時の雰囲気は全く再現出来ていないと思いました。逆に姫路城は薄暗い城内で、必要以上の表示板もなく好感を持ちました。写真が無くなってしまったのが残念です。

 夕方に自由時間が少しあったので僕は金沢大学医学部を訪れました。僕の曾祖父がここの初代学長で、僕は全く曾祖父の事を知らないので何か資料があるだろうと思い図書館を探しました。が、あいにくの土曜日で閉館が早く願いは叶いませんでした。この晩は金沢の古くからの街並みを留める町屋の店で鍋料理を味わいました。思いがけず、ご馳走してくださり、僕は皆へ、「ありがとう、ご馳走様でした」と言うんだよと教えました。

東海大学の作品展示スペース

ペン入れや錠剤入れなど蝶番など仕掛けが良く出来ています

座布団に見える物まで木でできています

札幌市内でカペラゴーデン卒業生の個展が行われていました

皆には初めての料理が続出

興石のショールーム

京都で宿泊した東寺庵で

金沢城

12日は福井県武生(たけふ)にある建具屋さんを訪れました。欄間(らんま)の一部分を教材とし、体験しながらお話を伺いました。この日の宿泊場所は 曹洞宗の大本山、永平寺でした。一泊だけでしたが、それまでの日常とは全く異なる中での貴重な体験ができました。翌朝の起床は未明といえる4時で、祈祷に参加しました。数百人の参列者がいる中、ご焼香を1人ずつしたのですがここで予想外のハプニングが起きてしまいました。周りの者のすることを真似するように言ってあったのですが、お香をかざす時に食べてしまったのです(笑)

その13日はカペラゴーデンとの付き合いの深い、高岡短期大学へ出向きました。校内見学後、寿司パーティが催されました。カペラゴーデンの紹介をしながらの交流が出来ました。僕は久しぶりにお寿司が食べられてうれしかったです。夜は校内にあるゲストハウスに泊まったのですが、皆は疲れているにもかかわらず大暴れ。レーザー・ディスクでのカラオケから始まり、小さいボールを見つけた事から本気のサッカー大会。かなり白熱してしまい、どうやってやめさせようか悩みましたが、勝手に疲れてくれました。もちろん何も破壊はしていませんが、この事は学校の方へは言えませんでした(笑)
 
 14日は井波の木彫を見学した後、富山県の山中にある民宿に泊まりました。とても自然豊かな場所で久しぶりにゆっくり出来る時間を持つ事ができ、散歩をしたり、温泉に入ったりして過ごしました。この頃には、皆はお箸の扱いにも慣れてきて上手く食事をこなしていきました。僕が感心した事は、使いにくいのに止めたりしないで箸を頑張って使い続ける事でした。色々な事に挑戦していました。

15日。世界遺産に指定されている白川郷へ行きました。宿泊も合掌(がしょう)造りの宿でした。夕食の鍋料理後、突然、女将さんが三味線を披露してくださりました。その次はカペラゴーデンの学生の番になり、ひょっとこのお面付きで1人が三味線、もう1人がウクレレでの即興になりました。なかなか楽しかったのですが、この頃には、スウェーデン人は室内ではほとんどタバコを吸わないなのに、日本では灰皿があると吸い出し、タバコの煙嫌いな僕はかなり不愉快な気分になる事が多発しました。スウェーデンに来てから僕のタバコ嫌いは加速しています。普段いる所ではまず臭わない為、タバコの臭いには非常に敏感になりました。

 翌16日。イライラと疲れが溜まっていたので、予定では名古屋の木工家を訪れる事になっていましたが、僕は一足先に東京まで帰りました。元々、かなり厳しい行程で、団体旅行をあまり好きではない僕には限界でした。自宅へ帰り、やっとリラックスできました。

 17日に皆は日本の刃物屋さんと鍛冶屋さんを訪れましたが、僕は実家のネコと遊んだりして一日休みました。18日は東京自由行動日で案内係として皆が泊まっている東京ユースホステルへ行きました。なかなかすごい所で、ビルの18階にユースホステルがありました。夜中に小さい地震があったようで何人かは気付いたそうです。スウェーデンでは地震はまずありません。僕のグループは新宿のカメラ店を巡ったり、東急ハンズへ行きました。そこで皆と見事にはぐれてしまったのですが、特に問題も起きず、安心しました。。この晩に僕は学生時代の友達と久しぶりに会う事が出来て楽しかったです。

 18日の成田空港発の飛行機でスウェーデンへ戻りました。自分の部屋へ帰ってきた時には、グッタリでしたが、色々あったとはいえ、良い旅であったと思っています。後日、時差ボケがひどいのか普段は朝遅くに現れる者も早起きしていたのが面白かったです。

工務店作業場内で

武生。組み手の体験実習中です

欄間とはふすまの上にある空気を通す部です

永平寺正面玄関前

朝の祈祷前です。この後に悲劇が(笑)

高岡の材木屋さんで

高岡で修復中の寺を見学しました

現場内は全員ヘルメット着用です

14日に宿泊した民宿。前日までに乾かなかった洗濯物を干して窓の外に出ています

白川郷で泊まった宿

三味線とウクレレの競演です

スウェーデン人の皆はジャパン・レール・パスを使用しました。期間内のJRは乗り放題になります

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!