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スウェーデン木工留学記
カペラゴーデン編
2003/01/01
第16回 ロウソク立てが完成。教会でお披露目
試作が終了した話からの続きです。いくつかの改善点を踏まえて新たに材料作りを始めました。が、その前に日本から持ってきていた鉋(かんな)たちの調整をしました。日本とスウェーデンでは湿気が大きく異なります。スウェーデンの方がずっと乾燥している為に、鉋の台(本体)である樫(かし)が縮んでしまいました。
スウェーデンに行く前からの想定よりも大きく縮みました。鉋の刃が緩くなってしまいました。もし、スウェーデンから日本へ持ち込めば、場合によってはきつくなりすぎて刃が抜けないか、最悪だと台が割れてしまうことでしょう。
実際の縮み量は大したことはなくとも元々ピタリと収まるように台と刃を調整しているので縮んでしまうと作業がしづらくなります。木工の道具の鉋とノミは買ってきてすぐに使える状態ではありません。どんなに高級品でも刃を研がなければ3流以下品であり、仕事も進みませんし、仕上がりも良くありません。さらに鉋の場合は刃を研ぐだけではなく、台に据えた状態でいい状態になるように”仕込み”ます。
刃をギリギリまで差し込んだ状態で、底部の平面を完璧に出します。平面定規と言う物があるのですがそれを使い、定規と木の接点から光が均一に、漏れるか漏れないかくらいの所まで追い込みます。台直し鉋を使って少しずつ調整します。あまり詳しい記述はテーマと逸れてしまうので省きますが仕込みが完璧に出来ると素晴らしい使い心地になります。もちろん普段も時々チェックをして調整が必要です。
ちなみに僕がいつも悩んでいることなのですが、台直し鉋の平面を直す台直し鉋があって、それを直す台直し鉋の台直し鉋が・・・・といくと一番最初は何なんだ?と堂々巡りをしてしまいます(笑)
製作開始です。手順は試作でもやっているので確実に行うことを大事としました。支柱を作り平面および直角出しをしました。基本となる部分なので慎重に行いました。しかし、10月中は講師の先生や絵の授業があったりでほとんど製作は進みませんでした。平面を出してブロックを用意する毎日に飽き飽きし始めたりと少々停滞気味に。
平面を作り出す鉋たち
直角定規などを当てながら、平面かどうか確認する
4つの直角を持った支柱が完成しました
ここは単調作業の繰り返し
前回決めたことの、土台となる下部を階段状にするという先生のアイデアを製作をしている内に嫌になってきてしまいました。滑らかにするという最初のやり方でいきたいと思いました。自分のやりたいように出来ないので作業自体も楽しくありませんでした。ちょっと勢いで先生の所へ”階段状にするのはやめたい”と言いに行きました。ちょっと返事が怖かったのですが、あっさりと”いいよ”との一言。拍子抜けですが僕のやりたいようにやらせてくれました。
11月前半イースターの休みにプラハへ旅行に行き、いろいろなことを見て感じ、新たなやる気がとても出てきました。お陰でその後は急速に製作が進み始めました。完成が近くなるとずしりと重くなり重量感たっぷりです。下部をどのように作り上げるかをまた考えていました。
荒取りをする為に彫刻用の丸ノミを玄翁(げんのう、金槌)で叩いて形を削りだしていきました。そこでふと、その掘り跡、模様、感じなどがとても良いと思い、これでいこうと決定しました。下の方は掘り跡が目立ち上は滑らかな面になるようにしました。後から皆からも言われたことですが、”土の中から生物もしくは神の腕が出てきてロウソクを支えているように見える”ようになりました。
中心部から部材を接着し、形が見えてきました
底面を揃えます
丸ノミで形成中。大きな木槌を使ってみました
ついに完成です
教会での披露。後ろに並んでいるのは他の学生の作品
木工留学記
ストックホルム編
カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。
本になりました!
スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0
当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!