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スウェーデン木工留学記
カペラゴーデン編
2003/06/10
第36回 ベンツバスの旅 - フィヨルドへ -
2002年夏の旅行がスタートしました。全行程を書いていくと大変な量になってしまうので要所毎の紹介にしたいと思っています。この旅行の大きな目標は、
ノルウェーなどヨーロッパの自然を見る。
ベルギーの修道院の為に作る家具の打ち合わせ。
この2つでした。
6月13日にカペラゴーデンを出発し、まずは比較的近くにあるガラス工房が多く集まる「ガラスの王国」方向へ走っていきました。初日はその近くにある湖沿いに車を泊めて宿泊。ガスコンロや、料理が上手く出来るかを確認もしました。長い旅の最初の晩です。
15,16日はスウェーデン最大の湖近くにあるキャンピング場へ泊まりました。僕たちにとっては初めてのキャンピング場で、ヨーロッパでのキャンピング場のシステムや、旅の前に用意しておいたキャンピング・カードの使い方を確認しました。一晩の予定だったのですが、居心地が良かったので連泊しました。専用の海岸がありとても綺麗でした。
18日にはノルウェーの首都オスロへ。車で最初は市内に入ったのですが駐車スペースを見つける事が出来ず、郊外に止めて電車で移動しました。今後の旅でもそのようにしましたが、中心部に駐車をするより、経済的にも時間的にも有効でした。オスロの駅前は最初の一時間はまだ良いのですが、その後は時間毎に数千円ずつ値が上がるという、実質、観光客は止めるなという状況でした。オスロにはそれほど興味が無かったので1日だけの滞在でした。
19日からはノルウェー南西にあるフィヨルドを目指して走っていきました。海岸沿いの道路ではなく内陸部を抜ける道を選びました。地図にも太く描かれているのでちゃんとした道だろうと考えていたのですが、実際は道幅も狭く、かなり急な山を登る羽目になってしまいました。場所によっては車がすれ違えないほどの幅しかないのですが、交通量がほとんどないので問題ありませんでした。ただし僕の車にはその急傾斜はかなり辛く、時速20キロも出れば良い方で、オーバー・ヒートしないか心配でした。僕の知っている平らな場所の多いスウェーデンとは違い、ノルウェーはとても山深い所でした。
途中でノルウェーでもあまり残っていない、全てが木造のスターヴ形式の教会に立ち寄りました。ノルウェー以外にも中世の北欧で建てられた木造教会は各地にあったようですが、現在は全く残っていないそうです。このEidsborgエイスボルのスターヴ教会は1200年代に建てられた物です。
20日からは道が明らかに一車線道路で、高い木が生えない程の高地になってしまいました。6月後半にもかかわらず至る所に雪が残り、放牧されている羊たちが悠々と道路を移動しています。すれ違う車はごくわずかで、故障したらどうしようと本気で心配しました。気温はかなり低かったのでオーバー・ヒートのリスクはほとんどありませんでしたが、車内で寝たら凍死しそうなので先へ進みました。
旅行開始前に目標にしていたのは有名なプレーケストールでしたが、旅行中に入手した情報などから同じリーセ・フィヨルドにあるKjeragシェーラグを目指す事にしました。こちらは「地球の歩き方」にも載っていない所で、車無しで行くのは非常に困難な場所に位置していますが、非常に興味をそそられる地点でした。
テントを持って歩いていく人の為に冊子も用意されていましたが、4日ほどの行程を推奨されていました。しかもゴール地点(フィヨルドの中頃)には電話のある小屋があるだけで、そこからフェリーに直接電話をし、特別にピックアップしてもらうという、時間に遅れたら翌日まで待たないといけないものでした。
プレーケストールはリーセ・フィヨルドの入り口近くに位置しますが僕たちが向かったシェーラグは一番奥深い所にあります。フェリーで移動してくるか、僕が走ったように内陸部をひたすら走ってこないとたどり着けません。フェリーは一日数本だけでした。20日の晩はそのフェリー乗り場近くにあるキャンプ場へ泊まりました。客はほとんどいないのですが絶景でした。
NorwayのDalenにあるキャンピング場
オスロにあるフログネル公園。数百の彫刻が有名です
Eidsborgエイスボルのスターヴ教会
これでも幹線道路です。雪も見えだしています
エサをもらえると思って集まってきた羊たち。しかし、もらえないと分かるとすぐに引き上げていきました
Lyseリーセのキャンピング場。氷河によって削り取られたリーセ・フィヨルドの一番奥まった所にあります。フェリー乗り場もすぐです。僕の車が分かりますか?
翌朝、まずは車でこの旅一番の急坂を登り、登山道入り口までたどり着きました。この水面から600メートルほどの地点から目指すシェーラグはさらに400メートルほど上に位置していて、片道約4キロの道でした。掲示板にも表示されていますが子供には向かない道程で、石に固定されているチェーンを頼りに崖を登るような所もある中、ほとんどは赤字でTと描かれているマークだけを頼りに登っていきました。
視界を遮る木は皆無で所々から見えるフィヨルドの水面はとても綺麗でした。氷河によって削り出された砂粒や堆積物の影響で水は緑色に見えます。風が吹かないと波もほとんど立たず、鏡のような水面になります。昨晩泊まったキャンピング場や、僕の車が豆粒のように見え、目眩がしそうでした。一緒に登った妻Kazueはあまりの高さに怖がってしまい、ゆっくりとしたペースで進んでいきました。
後半では勾配も幾分は楽になり、削り磨き上げられた石だけの場所が現れました。雪もありましたが、天気は悪くはなく、気持ちが良かったです。突然、目的だった場所に着いてしまいました。水面から1000メートルの2つの崖の間になぜか丸い岩が挟まっているのです。自然の神秘そのものと言える所でした。登山道入り口の掲示板には「見るだけにすることをお勧めします。」と書かれていました。
が、僕は上に立つ事に挑戦しました。そのつもりで来たのですが、いざその時になるとかなりの恐怖。2分ほど飛び移れないでいたのですが勇気を出してピョンと乗り移りました。下を見る余裕は無く、脚が震えるのも初体験でした。石の向かいで待機していたKazueに写真を撮ってもらい生還(笑)。死をあんなに身近に感じたのも初めてでした。日本だと絶対に立ち入れないようになっていそうですが、自然の姿そのままに留めているのは良い事だと思います。売店もトイレも皆無です。
ここ周辺はスカイダイバーにとっては有名な所で、飛行機を使わないダイビングのポイントでは世界で一番高い所だそうです。でも、事故もしばしばあるそうです。登山口で売られていたポストカードには、この岩の上に自転車を載せて二人で立っている写真など僕にはとても真似出来そうも無い物がありました。
帰りの行程で僕は足首を痛めてしまいました。やはりナイキの靴ではダメでした。登山靴を履きましょう!下山後はフェリーに乗って移動しました。今度は水面側から先ほどの岩を見る事ができ、これも写真に撮っておきました。
二日後にはプレーケストールにも登りました。こちらの登山道はかなり整備されていて、観光客が登りやすくなっていました。それでも、一部は岩の間を登る所もあり、油断は禁物です。運が悪く、この日はずっと雨が降る天気で、ゴール地点(水面から600メートル)でも濃い霧がかかってしまい何も見えず残念でした。
この後はノルウェー第2の都市ベルゲン方向へ走りながら氷河を目指しました。
登山道入り口まではこの急傾斜の道路を上がってきました
登り始めた所です。矢印の先には僕の車があります。他は展望台の従業員の車です
この地図によると、目的地への標高差は約400メートル
最初の難関です。ここだけは鎖の補助がついています
かなり登った先です。矢印の先には僕たちの泊まったキャンピング場があります
どのように通ったかは覚えていませんが、登りました
急傾斜が一段落し、休憩しています
一部、雪が残っていて、横切らねばなりませんでした
おっ、何か見えてきました!
ついに目的の石を発見!
矢印の先がシェーラグの岩がある所。とんでもない絶壁の上にあるのが分かると思います
木工留学記
ストックホルム編
カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。
本になりました!
スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0
当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!