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スウェーデン木工留学記

ストックホルム編

2004.10.06

第25回 日々徒然。ストックホルムでの2年目が始まる。

こんにちは、須藤 生です。ストックホルムは今が紅葉のまっただ中で、早朝などは油断していると凍えるほど冷え込みます。夜12時近くまで日が昇っていた夏とは違い、日照時間もどんどん短くなってきました。

8月終わりからストックホルムでの2年目が始まりました。僕にとってはスウェーデンでの5年目ということになります。こちらへ来た当初には考えもしなかった生活(結婚、子供、滞在延長)をしていますが、毎日が新鮮で充実しています。今回はあまり大きな出来事はありませんが、新学期の日々を紹介します。スウェーデンの親子サロンについても少し書いてみました。

夏休み直前の6月に“家具様式史”と“家具デザイン史”のテストがありました。が、家具様式史の方は合格点に達さず再試験となってしまいました。でも、今回は勉強をしていった甲斐もあり無事に合格しました。再試験にも関わらず優の評価がついたのは謎ですが(笑)。これで大学卒業に必要な単位のうち、4単位が取得できました。


先学期に採寸をしていた椅子の図面を描き上げました。今度はこの図面を元に、同じ椅子を作る製作過程になります。材料取りは既に済んでいますが、9月は様々な課題が目白押しで作業はあまり進んでいません。


CAD(コンピュータを使用した製図)の講義。AutoCADを使用して、毎回4時間(全5回)の集中講義行われます。ノートパソコンは学校から貸し出され、各々が自宅へ持ち帰り課題をこなすことも可能です。現在は3回目まで終わり、テストにも合格すると5単位を取得できます。


最初の課題であったアアルトのスツール。基本操作、コマンドを学ぶ為の課題でした。僕はCAD製図の経験があるのでそれほど慌てませんでしたが、ソフトのコマンド表記は全て英語なので、しばしば単語の意味が分からなかったりします(笑)。


これは家具製作科と家具デザイン科の2年生の課題。クリスマス頃に商品として売る物を発案し製作します。まずは2グループに分かれて数案を提案することから始めました。この課題は始まったばかりです。


今年も家具製作科には5人の1年生が入学しました。これは最初の課題で、校内で使う椅子を製作しています。この課題を通して、校内の道具や機械に慣れるという狙いも込められているはずです。


毎週一人の学生が朝の機械メンテナンスの担当になります。基本作業は機械の定盤(じょうばん。平面が出ていて、大抵は金属)を磨いたり、鋸の交換、清掃をします。集塵機の確認も大事。右側に見えるのは板の片面を平面にする鉋盤(かんなばん)、奥のは片面が平面になっている物の対面を平面にする機械。購入したばかりのドイツ製最新モデルです。鉋刃は換え刃式なので、交換整備が著しく容易になりました。


大小の鋸盤(のこばん。昇降盤ともいう。)です。左の物は集塵力を高めてあるのですが、強力すぎて材を切っている時に吸い付くほどなので、写真のようにフタをあけてあります。作業時は奥側に立ちます。


フレース盤と帯鋸(おびのこ)。見学者が来るたびに驚かれることですが、写真のように工房内は常にゴミの無い(少ない)状態に保たれています。大鋸屑(おがくず)などが散乱している中では良い仕事が出来ない、という事を強く教えられます。足が滑るかもしれない状態では危ないですしね。


今度は色について学ぶ集中講義。初日はダビンチやゲーテなどが唱えた色の理論から、最新のカラーシステムまでを教わりました。


2日目からはシアン、マゼンタ、イエローを使って様々な色を作り出す方法を、実習を通して学びます。スウェーデンにはNCS(Natural Color System)という色を表す形式があり、ヨーロッパで普及しているそうです。


NCSは赤R、緑G、青B、黄Yの4原色から作られた色と白、黒の量によって色を表します。写真は黄色から赤への変化が分かります。


次にそれらを並べて40段階に分かれるように選び出しました。


色を混ぜていく時点では変化が小さいので分かり辛いのですが、切り出して並べるとよく分かります。


NCSの色分布に並べました。この写真の物では赤から青への変化が不自然ですが、実習の一番の目的は“色の作り出し方”であり、考え方を学ぶことが重要だと言われました。この各段階の色にさらに黒と白を混ぜた色が細かく区分されます。


翌週からは、色について学んだことを踏まえて絵を描く課題。初日は同じような色系統の物ばかりのモチーフを描くことから始まりました。緑色のじょうろ、ブロッコリー、青リンゴ、ちり取り、バケツ等々。写真は僕の絵。出来はともかく(笑)、雰囲気は分かると思います。


これは他の学生の物。キウイと青リンゴです。


2日目。チラッと見ただけでは意味不明なモチーフ(笑)。


油彩、水彩画でもどのようなタッチ、構図で描くかは個人の判断です。


3、4日目は人物画。肌の明るい部、影のある所などや立体感を表現する事はとても難しいのですが、かなり勉強になりました。


随分と動き回るようになってきた息子を連れて、近くにある保育園のような所へ通っています。日本では親子サロンと言うのが適当かと思いますが、親子でいつでも訪れられる場で、他の子供達とも会えるので通っています。


実際はまだ小さいので他の子供と一緒に遊ぶことはあまりなく、各々が黙々と一人で遊んでいたりします。僕の息子はすべり台が大好きです。滑る時はへっぴり腰ですが(笑)。


歌の時間。皆でスウェーデン童謡を歌います。とてもスウェーデンらしく、移民出身の親を持つ子供がとても多いです。


お姫様のコスプレ? をして踊っている姉妹に見とれている息子です。まだ小さい子なのに、すでに動きがセクシーだったそうです(妻談)。


僕は学校があるので普段はここへ来ることは出来ませんが、妻がほぼ毎日遊びに行っています。最初の頃は息子もおどおどしていたのですが、今では他の子の持っている物を横取りに行くほど積極的になってきたのでうれしいです。ちなみに訪問料は無料です。

ではまた、次回!

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!