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スウェーデン木工留学記
ストックホルム編
2004.08.25
第24回 コペンハーゲン旅行(後編)
こんにちは、須藤 生です。このレポートが公開される今日からストックホルムでの2年
目が始まります。また様々なことを紹介していきますので楽しみにしていてくださいね。
さて今回は、前回からのコペンハーゲン旅行報告の後半です。
コペンハーゲン市内は歩いてもまわれる程の広さですが、電車やバスなどの公共交通を使うと気楽です。10回券を買うと、料金もずいぶんとお得です。これは市内を走るバス。2階建ては初めて見ました。 |
その2階建てバスの2階車内。車両自体がかなり新しいようです。 |
2階前方から見た市内の様子。左側に街の中心部が集まっています。 |
ここから入るとストロイエ通りまですぐ。バスの進行方向右側には城があったはずです。 |
船乗りが集まる居酒屋街として栄えたニューハウン。デンマーク語で“新しい港”という意味です。ちなみにコペンハーゲンは、スウェーデン語やデンマーク語だと“ショッピングの港”と書きます。 |
中央駅から少し歩いた先。右奥に見える通りからストロイエ通りは始まります。 |
逆側。正面の通りを50メートルくらい行った左側にコペンハーゲン中央駅があります。それより手前にはチボリ公園の正面入り口があり、入場券を買う観光客がたくさん並んでいます。 |
中央駅からすぐの場所に、SAS(スカンジナビア航空)のラディソンSASロイヤル ホテルがそびえ立っています。コペンハーゲンでは珍しい高層建築で、建築家アルネ・ヤコブセンに興味のある方なら聞いたことがあるのではないでしょうか。建物だけではなく家具や、食器までヤコブセンがデザインしています。 |
受付ロビー。ヤコブセンがこのホテルの為にデザインしたエッグチェアー、スワンチェアーが置かれています。チェックインカウンターは小さいので、最初は戸惑います。ランプはPHランプ。奥には朝食時などにも使用されるレストラン。椅子はヤコブセンの7チェアーなどなど。改装されているので昔ほどではありませんが、各部屋にもヤコブセンの家具が使われています。ちなみに今回、僕はこのホテルには宿泊していません(笑)。 |
今度は電車に乗って移動してみました。落書きがされているのがちょっと残念ですが、新しい車両でした。乗降時はボタンを押すと扉が開きます。 |
日本よりも軌道が幅広い為、車両自体もゆったりとしています。上部には路線図と現在地が示されていました。 |
ヨーロッパの電車は自転車用のスペースを持っている物が多いですが、この車両には前輪を差し込んで自転車を固定できるパーツが付いていました。混雑時はここに自転車が林立するのでしょうか? |
コペンハーゲン郊外の小さな美術館へ。今回のコペンハーゲン訪問の目的のひとつは、ここで催されているジョージ・ジェンセンの展示会を見ることでした。展示会名は“知られざるジョージ・ジェンセン” |
ジェンセンは元々は銀職人ではなく、彫刻家を目指していて、この分野でも非凡な才能を発揮していました。これは彼の息子をモデルにした胸像。1900年頃の作品です。 |
写真説明製作時に使用する道具たち。奥に見える金槌の柄は変わった形状をしていますが、振り子のようにバランス良く槌を振って銀を叩くのに適しているのだと想像できます。 |
1904年に工房を開いた頃の貴重な作品。アメジストをはめ込んだブローチ。薄い色ですが、たぶん中央の石もアメジストでしょう。 |
見事な細工のネックレス。琥珀などを使って植物を表現しています。1908年製。 |
館内はあまり広くありませんが、ジェンセンの初期の作品を中心に貴重な物をたくさん展示していました。 |
帰り道に街で見かけた銀食器の店。これは今でも生産されているAcornというジェンセン社の製品。デザインはJohan Rohde。ジェンセンと共に一時代を築きました。 |
今度は家具屋巡り。コペンハーゲンには良質の家具を扱う店がたくさんあるので、なかなか楽しいです。この店は広々としており、ゆっくりと見ることができました。 |
値段を見なかったので分かりませんが、たぶんイルムス ボリフスよりは安いのではないかと思います。良い物だらけですが、この日の店員はやる気がなさそうでした(笑)。この時期のコペンハーゲンは、観光客が大挙して押しかけるにも関わらず、夏休みで閉店している店がとても多いのと関係があるかもしれません。本当は皆、働きたくないのでしょう。 |
2階。左のフィン・ユールの椅子は、僕が次課題で作ろうと思ったのに、先生に止められた物。肘掛けが特に美しいラインを描いています。こんなに良い椅子達が贅沢なほど広いスペースに置かれていました。もちろん座れます。 |
さらに違う店へ行きました。前編で紹介したイルムス ボリフスに置いてあった椅子と 同じ物たち。こちらはローズウッド製。スツールや背もたれが違うモデルなど多種の 品揃えでした。 |
先ほどの紹介した展示会と、同時期にジョージ・ジェンセンの展示会がもう一つ催されていました。こちらは市内中心部にある国立美術館。 |
デンマーク人の映画監督、Bille Augustが会場デザインを担当していて、季節をイメージした区画ごとにジェンセンの製品が置かれていました。 |
展示品だけではなく、会場や照明もとても美しかったです。この展示会は日本へもやってくる予定です。 |
美術館からの帰り道、公園を抜けてみました。このような大きな公園が街からすぐの場所にあることは東京との大きな違いでしょう。たくさんの市民、観光客?が日光浴をしていました。女性はビキニか下着だけというのが、これまた日本と違ってすごい(笑)。 |
ここは工芸美術館。観光客の数も少なくなるコペンハーゲンの街の北側にあります。僕個人の印象では、コペンハーゲンで一番良い美術館だと思っています。コペンハーゲンに来るたびに見に来ています。 |
入り口。ここでもまたあのPHランプが。 |
ちょうど催されていた企画展はデンマークの工業デザイン史。生活の中にある物の(デンマーク製、非デンマーク製に関わらず)素材、デザイン、発展などが系統立てて並んでいました。 |
なんとパントンチェアーのプロトタイプ。細かく線が引いてあるので図面計測用かと思われます。 |
どちらが製品で、どちらが木でできたプロトタイプ(コードは含まず)でしょうか? |
デンマーク デザインに大きな影響を与えたデザイナーごとの部屋もありました。ここはヴェルナー・パントン。このところ、様々な物が復刻されているようです。 |
この部屋のテーマはちょっと思い出せませんが、ポール・ケアホルムの椅子などが並んでいました。 |
ここはヤコブセンの部屋。反対側には彼がデザインした小学校用の机と椅子も展示されていました。 |
フィン・ユールの椅子と共に、デザイン画も展示されていました。彼は三面図を水彩で描きます。 |
ウェグナーが象嵌製作を行った戸棚。マルムステン校の学生がこの戸棚を職人試験課題として作る予定です。ウェグナー家からの許可を受けています。 |
Functionalism(機能主義)がテーマの部屋。手前はアアルトの椅子。 |
最後の部屋にはたくさんの椅子が展示されていました。閉館直前だった為にじっくりと見ることが出来なかったのが残念。 |
美術館内の図書室。開館時間が限られていますが、雰囲気の良い空間です。椅子はコーア・クリントのバルセロナチェアー。 |
この美術館は展示も素晴らしいが、収納用の家具やショーケースも秀逸。写真はこの美術館がコレクションする日本刀の鍔(つば)収納の為の棚。 |
館内のカフェ。ウェグナーの椅子が使われています。 |
これまで何度かコペンハーゲンに来ていましたが、今回の4日間の滞在では、まだまだ知らない事をたくさん見つけることが出来ました。今度はクリスマス頃にでも来られたらいいなと思います。
ではまた、次回!
木工留学記
ストックホルム編
カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。
本になりました!
スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0
当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!