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スウェーデン木工留学記
ストックホルム編
2005.03.16
第33回 椅子の製作完了!
こんにちは!スウェーデンの須藤です。2回続けてストックホルム ファニチャーフェアの話題を紹介しましたが、今回はその期間中の僕の学業報告をします。そう、ちゃんと勉強していたんです(笑)。
職人試験を受験する為の戸棚製作を始めた3年生のシェーティル。ノルウェーから来ています。彼が製作する物はHans J. Wegnerが職人になる為に製作した戸棚。ウェグナーは象嵌の製作のみを行い(戸棚製作は他の職人が担当。象嵌でも職人資格を得られる)ましたが、彼は両方を一人でやる事にしました。 |
9月、10月の研修期間に製作し終えた象嵌。全ての合わせ目が密に接していて隙間は見あたりません。葉の先端などエッジも鋭く出来ています。これだけの技術を持つ人はスウェーデンでも少なくなっているようですが、この彼の象嵌加工の技術は超高等レベルと間違いなく言えるでしょう。全4面もあるので、製作には何百時間掛かった事でしょうか…。ちなみに戸棚の製作許可をWegnerから受け、図柄もオリジナル図面から写し取っています。 |
戸棚本体の接着面は側面、上下面、そして正面と全てが45度に加工されているので非常に困難な接着作業を強いられます。写真ではどの様な手順で接着をするかを検討中。 |
こちらは僕の作業机。椅子の各部材のフォルムを整えています。 |
背もたれになる部材。木目を見ながら南京鉋で形状を削り出します。ある程度までは機械の力を借りて加工する事が出来ますが、ここからは手加工が主になります。 |
でも、時間が掛かっている様では意味が無いので素早く作業する様に心がけていました。マルムステン校では製作ばかりではなく、色々な講義やレポート提出などの課題が目白押しなので、空いている時間に効率よく作業をしないと間に合わなくなってしまいます。 |
ハルマンの製作中の椅子。接着を済ませてからフォルムをさらに整えます。 |
それと平行してソープ フィニッシュの実験。デンマーク家具でよく用いられる石けんを用いた仕上げ法です。 |
僕より長い年末年始の日本滞在をし、2月始めにスウェーデンへ妻と息子が帰ってきました。が、いきなり息子は40度前後の熱をだしてしまい病院へ行く事に。日本の様にすぐ近くに外来診療がないスウェーデンではその地区を管轄する病院へ出向かないとなりません。僕たちの地域ではストックホルム中心からちょっと北にあるカロリンスカ研究所所属病院。スウェーデン最高の病院です。小児科には長靴下のピッピの作者として有名なアストリッド リンドグレンの名前が冠されています。 |
看護婦さんによる事前診療を終えて、ようやく到達した待合室。 |
診療室はすべて個室になっています。インフルエンザではないかと心配していたのですが、幸いな事にそうではなかった様で安心しました。全診察が終わるまでの滞在時間は4時間にもなりました。ストックホルムの病院事情をなんとかしてほしい…。かなり問題になっているようです。 |
部材の形を整えた後、接着開始です。背もたれの薄い部材は圧着時に簡単に反ってしまうので、それを防ぐ為の下準備およびテストが必要でした。 |
次に前脚部も接着。一気に作業を進めました。 |
接着部が密になっているかは見た目だけではなく、今後の耐久性にも繋がるので重要です。 |
はみ出した接着剤などを処理し、ねじれが無いかを確認した直後。ここでオイルを塗る前に300番くらいのサンドペーパーで仕上げ。木の種類によってはもう一つくらい細かい番手で磨きますが、チェリー(サクラ)材の場合にはこれくらいで十分でしょう。 |
オイル塗装は容易という事もありますが、素材の表情が変化する素晴らしさが僕は大好きです。今回はデーニッシュ オイルを選びました。オイルを塗布すると、それまでは薄い色だった木が化けます。 |
薄く塗った後、4~8時間ほど乾かし、軽く磨いてからもう一塗り。これで色がさらに濃くなり、全体のバランスも整ってきます。今後、時間を経る事でもっと濃くなる事でしょう。完璧に乾かした後はまた300番のペーパーで余分なオイルのざらつきを取り、秘密兵器パンティーストッキングの登場。もちろん女性用です(笑)。以前、机を作った時に教わったテクニックで、これで磨き上げるとツルツルになるのです。 |
製作終了後の発表。ここではこの椅子を選んだ理由から製作過程、出来事などを皆に説明する事が求められます。 |
背もたれとなる部材を加工する時に使用した治具について説明するハルマン。発表の内容を聞き、しっかりと理解できていると先生が判断する事で合格と認められ単位を取得する事ができます。 |
材料は違いますが同じ椅子を作ったハルマンとラスムスの椅子。どちらも美しい。 |
ちょうどファニチャーフェア出品の家具を撮影していたデザイン科の撮影現場へ持ち込んで、僕たちの椅子も撮らせてもらいました。 |
僕が製作したカール マルムステンの椅子Lusse。あまり多く商品化されなかった物です。座面はこれから編む予定。 |
製作課題に平行してデジタル写真の講義も行われました。この写真はデジタルカメラの操作(ホワイトバランス)などについて学んだ日。 |
こちらの日ではパソコンを使って画像処理。先生(正確には講師の助手)は僕たちより若そうだ。 |
このコースの提出課題はポートレート。ウェブサイトに使える様な、人物の人柄を感じさせる物という条件。 |
二人と撮影を一緒にこなしました。 |
すごく絵になる二人と比べると僕の分はなんか恥ずかしいなあ。どれかを選ばないといけないのですが、なんか照れます(笑)。 |
このような日々(実は自然科学の講義とレポートもあった)をファニチャーフェアと平行しながら過ごしていました。はっきり言ってかなり忙しくヘロヘロでしたが、得る事は多かったです。
木工留学記
ストックホルム編
カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。
本になりました!
スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0
当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!