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スウェーデン木工留学記
ストックホルム編
2005.05.18
第36回 ミラノサローネへ。後編
こんにちは!前回に引き続き、ミラノサローネの報告です。今回はまず企業の展示ブースから。前回紹介したサテライト会場もかなり広いのですが、サローネ全体から見ると、ほんのごく一部です。
会場はデザイン、クラシック、モダン、照明、バス用品というように大まかに分類されていますが、一つずつ見て回るにはうんざりするほど分散していて、ちょっと困りました。でも、このブースは一館全てがAlessiの展示。 |
各館にこの様にブースが並んでいるのですが、27館にも分かれ、さらに3階建てだったりすると、もうちょっと近代的な見本市会場を用意してもらいたいと感じるのは、きっと僕だけではなかったはず。 |
今回、僕はプレスパス(取材許可証)を所持していたので、会場に自由に出入りでき、写真撮影も許可(通常は禁止)されました。ストックホルム家具見本市でもこの点は同じで、非常に有意義な取材活動を行う事ができました。が、なんとサローネでは企業によってはプレスでさえ撮影を断る所が続出。それらのブースで決まって言われた事が、“プレス マテリアルとして配っているCD-ROMの中にある写真だけを使ってください”との事。 |
スウェーデンの3企業が並んで出展していた統合ブース。ストックホルム家具見本市でもお馴染みの顔ぶれです。見栄えのするプラスティック製の家具が、とても目立つサローネ会場の中では、スウェーデン家具はちょっと異質に感じました。 |
どう違うのかと言われると難しいのですが、スウェーデンでこれら(特にOffect)の商品を見た時は、モダン(Modern)デザインな家具だな、と感じましたが、今回見たイタリアの家具はさらにスーパーモダン(笑)だった、という感じでしょうか。スウェーデン企業の家具は、デザインだけではなく美しさとクオリティを、もう少し求めていると感じます。実際、細部の出来はスウェーデン製の方が良さそうです。 |
Softline社のTINA 2。綺麗に光が抜けて見栄えは良いのですが、暖かい日にショートパンツで座ったら肌がペタペタとくっつきそう…。 |
とても綺麗なラインを描くKOSEの花器。 |
色づかいとか見せ方(魅せ方)が凄く上手かった。しかし、ウェブサイトがまだトップページしかないのが残念。 |
今度は照明のエリア、EUROLUCE(LUCEはイタリア語でライト)へ。この写真はプレス用に配布された物。ズームする様に見える撮影テクニックは単純だけど、とても効果的です。 |
こちらも日本のNendoによる照明Sorane。LEDによる光とスピーカーが埋め込まれています。イタリアのoluce社から。 |
前回も紹介したM+K DesignによるランプGlobolus。各色ごとの展開かと思ったら、時間の経過で光が変化する様になっていて素敵。 |
展示会場というより美術館の様だったFLOS社。これはMarcel WandersによるCocoon Pendant Lamp “ZEPPELIN”。和紙(もしくはライスペーパー)を使用して、暖かい光を生み出しています。日本の光に近いのではないかと感じます |
Piero Lissoniのライト“Button”。壁一面に敷き詰められていて強烈な存在感。この写真の二人は眩しいのに、ずっとここで議論しあっていました(笑)。ちなみに左上のランプは消えているようです。 |
フロアーランプ、テーブルランプ、つり下げ型など様々なタイプがあるPhilippe StarckのMiss K Family。 |
こちらもスタルクによるフロアーランプ“Lounge Gun”、卓上ランプ“Table Gun”と、ベッドサイドランプの“Bedside Gun”。展示のみの作品かと思いきや、新商品だそうです。 |
Esedraのライト“Baby Jane”。アクリルを抜けた光が綺麗。 |
フロアーランプ、テーブルランプ、つり下げ型など様々なタイプがあるPhilippe StarckのMiss K Family。 |
ドイツのnext社のLIQUID_LIGHT。まるで滴り落ちる寸前の水の様なフォルム。もっと大きな物もありました。 |
イタリアのランプとは光らせ方が対照的な、デンマークLouis Poulsen社のPH ランプ。光源の光を傘に当てて反射させ、柔らかい光と陰影を生み出しています。 |
ここでは資料をもらい忘れてしまいましたが、傘の付いているシャンデリアが気になりました。 |
今度はサローネ会場から外へ出て、ミラノ市内へ行ってみましょう。市内でもあらゆる場所で展示会が行われていました。ここは東京デザイナーズウィークの会場。 |
MetaphysのロウソクHONO。周囲に流れている音や、空気の動きで光が揺らめき、まるで本物のロウソクの様な雰囲気を醸し出しています。フーッと息を吹きかけると、ちゃんと消えるのが面白い。製品化の最終段階になっているそうで楽しみです。 |
写真説明そして次はTortona地区へ。一緒に来たマルムステン校の学生達からここは面白い!と勧められたので、一日かけて見る事にしました。まずは最寄りの駅Porta Genovaから鉄橋を渡って、線路をまたぎます。 |
古い建物が多くあるエリアへ。 |
街中で約400もの展示がある中、この地区だけで50以上の催しが集中しています。Superstudioでは日本のWA-QUによる展示が行われていました。京都を本拠とするデザイナーや建築家などによるプロジェクト。これは非常にモダンな茶の空間。初日にはお茶会も催されたそうです。 |
間仕切りのシルエットが竹林の様な効果を出していて、とても綺麗でした。 |
そこからちょっと歩いた所に、トルコのDERIN社の展示会場が。倉庫をそのまま使っています。 |
Tortona地区の中でもさらに展示の集中しているエリアの案内板。この地区の全てを見て回るには丸一日が必要です。 |
強烈な存在感を持っていた松ぼっくり型のランプ。閉じる事も出来るようになっています。 |
ここで展示されている物は様々で、いくら見ていても飽きません。 |
サローネ会場と違って展示をし易そうな雰囲気がありました。出展料もこちらの方が割安(サローネは一番安くても一平米で120ユーロ+税20パーセント)なのかな。 |
会期中ずっと天気の良かったミラノ。青空の下、デザイナーの作品たちに腰掛けて休憩するのも楽しい。 |
展示はまだまだあります。こちらはTom Dixonの展示ブース。このカップルの存在で完璧な空間になっていました(笑)。 |
オランダのmoooi。広大な壁一面を花で埋め尽くすという、今回見た中で一番豪華(に見える)な展示スペースでした。 |
非常に美しいラインを描くランプがたくさんあった、ベルギーのMaterialise。 |
こちらはミラノ中央駅近くの会場。 |
他の方のリポートでもたくさん紹介されている事からも分かりますが、要チェックの場所。真っ赤だったCappellini社。 |
Swedish Style Milanと称して、様々なスウェーデン企業が展示をしました。ここにはストックホルム家具見本市で選出された(詳しくは第31回レポートをご参照ください)デザイナーの作品も並びました。夜のパーティーへ出かけたのですが想像以上の大混雑で、ほとんど見る事も出来ずに出てきてしまいました。残念。 |
せっかくミラノに来たので、市内観光もしてきました。ここはミラノの中心Duomo(この写真の右側)前の広場。アーケード街Galleriaの入り口を見ています。 |
19世紀後半に作られた豪華な装飾を擁するアーケード。オペラの殿堂スカラ座へ続いています。 |
デザインだけではなく音楽の都でもあるミラノの凄さを感じた少年たち。普通の少年という風貌だけど、素晴らしい演奏。単なるお小遣い稼ぎのレベルではなく、曲が終わるごとに拍手の嵐でした。ミラノ恐るべし(笑) |
そしてDuomo(カトリックの教区を司る大聖堂の事。聖マリア大聖堂、カテドラル、ドームとも言う)の中へ。ケルンのドームも大きかったけど、ここも圧倒される大きさ。よく建てたなあ、と感心してしまいます。 |
写真では迫力が伝わらないのが残念ですが、とにかくデカイ! ステンドグラスもすごい。ゴシック様式の巨大な建築構造を外から押さえる無数の支えが、グロテスクと思えてくるほどでした。 |
巨大さについ、上の方ばかりを眺めてしまいますが、床も注目に値します。ダイヤモンドカッターなど無かった時代にこれだけの柄を作り、組み合わせ、しかも表面を平面に磨き上げた苦労を考えると気が遠くなります。 |
非常に光が少ないという撮影をするには悪条件の教会内(フラッシュ禁止)で、ロウソクを一本立てる女性を撮影。 |
ミラノと言えばファッションの都! とりあえず、超高級店ばかりが並ぶMonte Napoleone通りへも行ってきました。ここで僕はこのミラノ旅行で一番大変だったと断言できる、妻からの指令(笑)を実行。 |
妻によると、La Perlaラ ペルラはイタリアの高級レース、シルクを豪華に使った最高級のランジェリーブランド(らしい)。下着好きなら誰でも知っている(らしい)。店員さんと話しながら、棚から色々と出してもらってスリップをひとつ選びました。手縫いの要素が多く、随分と出来も良かったので気に入りましたが、お値段も凄かった…。材料が少ないのに…(笑) この写真は許可をもらって撮影した店内。素敵なドレス。 |
いかがでしたか? 今回のミラノ旅行の全ては紹介しきれませんでしたが、様々な事柄をご覧頂けたかなと思っています。同じヨーロッパではありますが、スウェーデンとも、ドイツとも違うイタリアの文化を見る事ができ、とても勉強になりました。個々のイタリアンデザインの素晴らしさなどは随所で感じましたが、強いて言うと公共システムとか、目立たないけど大事な部分が今ひとつかなとも感じました。今回は時間がなかった美術館巡りなどをしに、来年もまた(職人試験まっただ中ですが…。)来てみたいものです。
そうそう、来年のサローネに興味のある方(出展、見学に限らず)、ホテルの予約は今からでも決して早くありませんので、早めに確保しましょうね~。
木工留学記
ストックホルム編
カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。
本になりました!
スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0
当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!