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スウェーデン木工留学記

ストックホルム編

2005.06.22

第37回 ギターの職人試験&NC講習

こんにちは!つい先日、マルムステン校の2年目が終了し、夏休みになりました。でも、僕の第2子の出産も迫っているのでそれほどノンビリするわけにもいきません。ストックホルムで出産する予定なので、今後のレポート内にて報告したいと思っています。さて、今回はまだ春の陽気が続くストックホルムの様子からご覧下さい。天気が良ければポカポカと暖かいのですが、まだ上着は手放せません。

冬にはスケートリンクになっていた街の中心部にある王立公園。


2年前に巨大な菩提樹並木を一部伐採し、桜が植えられました。まだ細いながらも綺麗な花がついています。


その下でチェスに興じるおじさんたち。


すぐ近くにあるオペラ座。今、ここでは長靴下のピッピのバレエ公演が行われています。屋上にピッピのお下げが見えているのが分かりますか?


そして、その目の前の海、王宮を臨む側には意味不明の物が…。去年は指だけだったのですが、今年は顔の一部分が加わりました。来年はどうなるんでしょう


指さしている方向を見ても分からない。左端に見える国立美術館を指しているのかなあ?


ガムラスタン(旧市街)にある王宮へ。ここでは国王などが執務しています。


国王直属の衛兵。まだかなり若いと思われる。


写真を撮っても良い? と聞いたらポーズを取ってくれました。しかし、銃剣は恐いなあ。


ちょっと街中へ。セルゲル広場にそびえ立つ塔。


その奥側にあるオレンス(オリエンスとも書く)デパートがあります。これは春の新作化粧品フェアーの広告。街中がこの様な斬新な広告だらけになりました。


そして、僕はガムラスタンにある小さな工房へ出向きました。


ここは椅子の籐編みなども専門にする、カゴ編み職人工房です。


第33回レポートで紹介した、僕が製作した椅子の座面を編んでもらう為に訪れました。自分でやろうかなとも思っていたのですが、時間が取れなかったのと、プロの仕事に興味があったので注文する事にしました。


結果は大満足。想像以上の最高の出来でした。


逆に工房の方から、僕が行った椅子の仕上げの良さまで褒めてもらえました♪ 恐るべし、パンティーストッキング…。詳しくは第33回レポートで(笑)


ギター製作科の3年生が受験していた、職人試験作品の審査が行われました。


作りの美しさも重要ですが、一番大事な点はやっぱり音。試験官は演奏しながらチェックしていきます。


しかし、どの部分を見ても美しい…。


翌日にはプロのギタリストを招いて披露演奏会。各ギター毎に違うギタリストが担当するという豪華さ。


自分が作った楽器をプロに演奏してもらえるなんて、本当に羨ましいですね。


2重奏。


聴かずとも音の良さを十分に想像できてしまいます…。


自分の作ったマンダリンについて批評を聞くニンナ。


作品と共に。エンマ。


僕たち家具製作科2年生は、5月のある日、2泊3日の日程(作業は2日間)で実習へ出かけました。


目的はNC加工の研修です。これまでにNCプログラミングの実習をすでに受けていて、今回はそのプログラムを元に実際の加工をしました。NC(CNCとも言う)を簡単に説明すると、コンピュータ制御で加工を行う技術です。プログラムが正しければ、人間の手では絶対に不可能なレベルの精度で同じ物を幾つでも作る事ができます。現代的な量産工房では不可欠な技術でしょう。


この実習場所は木材加工の教育機関としての役割も持っています。非常に広いエリアに様々な機械が並んでいます。


機械場だけでなく、手作業場、塗装室、コンピュータ室など全ての設備が素晴らしく羨ましい限りです。ビルの中にあるマルムステン校は対照的に狭っ苦しいのです。


僕たちの作業場になるNC加工室。イタリア製のNCマシンです。


この実習場所は木材加工の教育機関としての役割も持っています。非常に広いエリアに様々な機械が並んでいます。


プロテクターに囲まれた中には様々な形状の刃物が取り付けられています。これが分速数万回転で回ります。誤って手で触れようものならば…。


加工について学ぶ前に、まずは緊急時の対処法について。そこら中に緊急停止させる為の仕掛けがある事を教わりました。


これは僕が事前にMacのCADソフト上で描いておいた図面。これを元にして座標点を取り出し、円弧の角度などをプログラムしていきます


何になるかというと、BRIO(ブリオ)の汽車を走らせる線路です。面取りなどもNCマシンに行わせる為に、微妙な修正を加えながら何度もテストを繰り返しました。これはMDF集成材。


マルムステン校の学生が実習に来るという事で、地元紙の記者が取材に来ました。数日後の紙面に、写真が大きく掲載されていて驚きました(笑)


初日は夜8時過ぎまで作業し続けました。でも、夏に向かって日がどんどんと長くなっているスウェーデンでは、まだやっと夕方という感じです。


宿泊した地元のユースホステルには卓球室が備わっていて、僕はかなり久しぶり(たぶん20年ぶり?)に楽しみました。


隣室にはビリヤードルームまで。皆、疲れているはずなのに夜遅くまで遊んでいました。


そして作業2日目。やっと準備が整い、こんどは白樺の板へ加工をします。まずは加工台上へ正しくセット。バキューム(真空にして吸い付かせる)で板をガッチリと固定します。


その後はプログラムをスタートさせて、加工が進んでいくのを見守るのみ。全員の加工が終了した後、帰路に就きました。


翌、月曜日に部材を接着し、仕上げました。


蝶番(ちょうつがい、ちょうばん)は製作中の戸棚の練習を兼ねて、綺麗に取り付けてみました。上蓋を開くと、線路が現れます。


手前に手をかけるとバランスが悪かったので、この後に脚を修正しています。


単に線路を刻むだけではつまらないので、市販されているブリオの線路をはめ込む場所もNC加工時に掘っておきました。


走行車両は先ほどのミルク車と、この3両。最近のブリオ製品はプラスティック製が主流となっていますが、わざわざ木製の物を探してきました。


実はこの戸棚は僕の息子の2歳の誕生日プレゼントとして作りました。棚には絵本を収納するつもりです。学校へ見に来た息子も気に入ってくれたようです♪


遊び疲れたのか、その場に座り込んで一杯飲み始めました。フタをおちょこの様にして使い、クイッと飲んでいます(笑)。


次回は家具製作科3年生の職人試験作品を紹介する予定です。ではまた!

木工留学記

 カペラゴーデン編

メルマガで配信していた留学記です。主にカペラゴーデン留学中の1999-2003年頃の事柄を紹介しています。

子育て記

日本とは異なるスウェーデンの出産育児を絡めながら、2003年の長男誕生前後を紹介しています。

木工留学記

 ストックホルム編

カペラゴーデンの終わり頃と、ストックホルムのマルムステンCTDでの事柄が中心です。2003年からJDN(ジャパン デザイン ネット)上で7年間、連載していましたので読み応えがあります。

本になりました!

スウェーデンで家具職人になる!
税込み価格1890円
須藤 生著 早川書房発行
ISBN 978-4-15-208925-0

当サイト上に掲載している内容などを新たにまとめ直し、さらには書き下ろし記事もたくさん追加しています。写真だけではなく、図面なども豊富に盛り込んでいます。興味深い内容になっていると思いますので、ぜひご覧ください!